短歌

陽を透かすショーウィンドウに脚をはり小さき蝶は羽を立ており

歩いていたら、ショーウィンドウのガラス面にシジミチョウが止まっていた。
こんなに滑らかで、引っ掛かりのない垂直面にも羽を立ててとまれるものか、と少し感心して眺めていた。心なしか、少しでも動いたら落ちてしまうかのような緊張感もあった気がするが、おそらくシジミチョウ的には余裕なのだろう。
分厚くクリアなガラスに蝶がとまっていると、空間の中で羽が静止しているかのような唐突さを感じた。
ちなみに、シジミチョウは感じで小灰蝶とも書くらしい。
小ささとグレイッシュな見た目を両方伝えられて良い記法だと思い、歌にも入れようとしたがうまく入らなかった。

寒風(さむかぜ)をうけて走れる小流れに白鳥の二羽首挿し込みつ
風の強い冬の日、白鳥の飛来地になっている川を見に行ったら、二羽の白鳥が川に浮かんでいて、首を水中に差し込みながら餌を探していた。
風の冷たさと、水の流れと、白々とした鳥の姿のすべてが寒々しく、こんなに冷える光景もなかなか無いなあと思った。