ビルを剥く

混みあう繁華街で、ビルが一棟解体されていた。

隙間も無いほど密集している建物のうち、一区画だけがぽっかり更地になっている。
更地の両隣のビルや、奥のビルが、今まで人の目に触れてこなかった壁面を日光にさらしているのが印象的だった。
じめっと黒ずんだ壁面には窓やパイプ、非常階段が取り付けられている。これらは、今まではこんなに陽や風を受けることのなかったパーツだ。
また、「炉端焼き」という文字が書かれている看板もあった。昔、もっとビルが少なかったころに作られた看板だろうか?
少なくとも、今までは歩行者の目からは全く見えなかったはずの看板だ。

雑踏の町で、なんとなくビルが虫干しされているかのような、すっきり感のある景色だった。