雲を流す

川べりに座って雲を眺めているとき、雲量がある程度多いときだけできる遊びがある。
ゆっくり流れていく雲で視界を埋めながら、意識して、雲が流れているんではなくて、自分を含むこの地面の側がゆっくりスライドしている、と思い込むのだ。
子供のころ、回転ずしに行ったとき、流れているレーンだけを集中して眺め、「レーンが動いているのではなくて、自分の座っている座席の方が動いている」と思い込もうとした遊びのスケールが大きい版だ。
さすがにこの規模になると、なかなか成功しないし、成功してもその感覚は数秒くらいしか続かない。しかし、何かとりかえしのつかない力にズルズルと引っ張られて落ちていくような不思議な感覚になれる。